2009年度は最大の懸案である、構造設計を進めた。この設計には、単純に機械構造的な側面に加えて、ガンマ線検出器としての結晶シンチレータの性能を劣化させないように、蛍光の光集率を極端に下げず、できるだけ向上させる工夫が欠かせない。また、構造設計にも熱歪みへの対応も要求される。これらの面から、まず厚さ2-3cmで長さが20cm未満の、比較的構造開発の用意な結晶を目的に開発を進め、以下の結果を得た。 1.10x20x3cm3の大型BGO結晶シンチレータを、反射材経由でCFRP補強材に接着し、構造体にネジ固定する支持方法の試作を行い、打ち上げ振動に耐えることを実証した。この補強構造は全体の7%以下の重量しか占めておらず、目標を達成している。 2.反射材としてBaSO4塗料とESR素材を10x18x2cm3 BGO結晶を用いて定量的に比較した。読み出しは1x1cm2のAPDを用いた。実験の結果、後者の方が最終的に得られる光収集効率が有意に優れていることを確認した。 3.接着面の反射素材として、BaSO4塗料とESR素材の接着強度を衛星で使用可能なエポキシ接着剤を用いて比較した。実験には重り、または引っぱり強度試験器を用いた。実験の結果、前者の方が後者よりも格段に強度が高いことが分かった。 4.上記の実験結果から、BaSO4塗料とESRを組み合わせることで、ある程度の光収集効率を維持しつつ、固定に必要な強度を維持できる反射材・支持補強構造を提案した。
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