研究概要 |
クラスター相の発現と消失は、自然界の様々な階層において観測される普遍的な現象であり、各階層におけるクラスター相関は、それぞれの階層におけるダイナミクスによって支配されている。クラスター相関の発現と消失は、一種の相転移であり、そのメカニズムを理解することは、その階層におけるダイナミクスを理解する上で非常に重要である。核子の集合である原子核の場合、多くの核の基底状態では、核子が平均ポテンシャル中を独立に運動すると考える平均場模型が有効であり、外見上はクラスター相関を消失している。しかし、近年の申請者らによる実験研究では、クラスター相関を消失していると考えられてきた基底状態に、クラスター相関が部分的に発言していることが示唆されている。そこで本研究では、ノックアウト反応を用いて原子核の基底状態におけるクラスター相関を研究し、原子核におけるクラスター相関の発現と消失の機構を明らかにすることを目的とする。初年度であった平成21年度は、ノックアウト粒子検出のための半導体検出器を調達するとともに、その性能評価を行った。具体的には京都大学タンデムバンデグラフ型加速器によって加速された陽子ビームを用いてp+p弾性散乱を測定し、エネルギーならびに時間分解能が要求性能を満たしていることを確認した。さらに、この半導体検出器の実戦テストとして、大阪大学核物理研究センターのサイクロトロン施設において、αクラスター移行反応である^<16>O(d,^6Li)反応の測定を実施した。この反応は、^<16>O核の基底状態におけるクラスター相関を理解する上で非常に重要である。この実験データは目下解析中である。
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