2010年度は、2009年度から引き続いて超弦理論を用いて中間子のスペクトルを解析する研究を行った。これまでの研究で、弦理論によるQCDの記述法が得られ、特に開弦のゼロ質量状態から、π中間子やρ中間子などの中間子が得られることが議論されたが、2010年度はこの記述に基づき、開弦の励起状態のスペクトルを調べ、これを実験で見つかっている中間子のスペクトルと比較した。その結果、開弦の励起状態から、スピンが2以上の中間子を含む様々な中間子が構成されることが分かり、それが実験で観測されている中間子のスペクトルのいろいろな特徴をうまく再現することが分かった。この結果は、弦理論とQCDとの間の双対性において、弦が振動したり回転したりする状態まで含めて、弦理論とQCDとがうまく対応していることを示唆している。これまで、ゲージ理論と弦理論の間の双対性に関する研究は数多く行われてきたが、そのほとんどは低エネルギー有効理論を用いた議論であった。今回の研究によって、まさしく「弦」の理論がゲージ理論と対応していることの証拠を得ることができた。
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