二光子励起過程による偏極電子ビーム生成のために基礎的なR&Dを行った。具体的には二光子による高スピン偏極度電子ビーム生成の妨げとなる半導体試料内のドーピング材料の検討、レーザーの高純度化を目指し研究を行った。 ・明らかになった現象 波長1560nmのレーザー用いたGaAs半導体からの電子ビーム生成に関する調査の結果、レーザー強度が充分に得られない場合、予測される偏極度90%に対し20%程度の偏極度しか得られないことがわかった。これはレーザー自体に含まれる倍波成分とGaAs半導体の不純物準位が関与していると考えられる。これらの効果はレーザー強度をさらに高め二光子励起過程の成分を増加させることである程度は解決できると考えられるが、従来の90%を越える偏極度を得るためには上に上げた問題を本質的に解決することが必要となる。 ・R&Dの内容 我々は新たにCWのダイオードレーザー(波長1560nm)を用いた試験システムを構築した。このシステムを用いることで多光子励起用の半導体試料として最適なドーピング原子やその添加量を調査することができる。また、もう一つの問題と考えられるレーザー自体の倍波成分に関しても光学フィルターを利用し純度を高めることを考えており、その試験を行うことも可能となる。本研究ではこの新たなレーザーシスムの立ち上げはほぼ終了しており、現在半導体試料の最適化試験を行っている。その結果として、ドーピング原子として亜鉛を用いることで問題となる不純物準位を減らすことが可能なことが既にわかっている。
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