弦理論とゲージ理論の対応関係は、単一弦と単一トレース演算子の間のみならず、複合弦や複合トレース演算子の間でも成り立っている。この関係は、PP波極限において、弦の場の理論のハミルトニアンとゲージ理論の複合トレース演算子の異常次元の対応で詳しく調べられた。その極限を超えた対応を調べるためには、まずPP波背景上の弦の場の理論をもっと一般的な背景上に拡張しなければならない。そこで、PP波背景上の弦の場の理論を見直したところ、PP波背景の対称性の一部である超リー代数su(2|2)だけが弦の場の理論の構成に本質的な役割を果たしていることがわかった。これは、超リー代数su(2|2)の対称性だけを持つ背景(泡立ち背景)上で弦の場の理論を構成できる可能性があることを意味する。今年度の前半は泡立ち背景上の弦の場の理論の構成を詳しく調べた。 後半は混成型弦理論を使って、現象論的な模型を再現する研究を行った。標準模型は実験とよい一致を示すが、その物質の内容は審美的な観点から決して満足できるものではない。ところが、例外リー代数を用いるとその物質は実にコンパクトに統合される。そこでここでは、混成型弦理論を用いて、標準模型の代わりに、例外リー代数に基づく大統一理論の導出を目指した。先行研究によれば、そのような三世代模型はただ一つしか存在せず、しかもさらなる現象論的な要請を満たさない、という否定的な結果に終わった。ここでは、これまで歴史的に蓄積された手法を組み合わせることで系統的に調べ、その結果ある範囲内で三世代模型が三つ存在することがわかった。先行研究の現象論的な問題点が改善されたわけではないが、これからよりよい模型が横築できることが示唆された。この結果は現在投稿中である。
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