研究課題
本研究は、将来の精密な観測との比較に耐えうる、有限質量のニュートリノ効果を考慮した非線形構造形成理論を徹底的に構築・整備することが目的である。本年度の中心的な成果は、球対称な密度揺らぎの重力崩壊に及ぼすニュートリノの効果を取り入れた計算コードを完成させたことである。研究成果については、既に3つの国際会議で発表し(ひとつは招待講演)、国内の学会でも発表を行った。球対称な重力崩壊モデルでは、非線形な重力進化を記述する有用なモデルである。また、将来の大規模重力多体計算を検証するために必要なモデルでもある。ダークマターのみのモデルから始まり、より現実的なモデルとするために、バリオンガス、宇宙項を含むモデルなどが研究されてきた。ニュートリノは流体として扱えないために導入は困難とされていたが、我々は方程式系を波数空間と実空間に分割して解くことによってこれを可能とした。結果として、以下のことが明らかになった:(1)初期揺らぎの大きさを固定すると、ニュートリノの質量は天体の形成時期を遅らせる。(2)ニュートリノ質量が小さい(0.2eV程度以下)とダークマターの線形成長揺らぎと対応させて定義されるクリティカル密度揺らぎが小さくなる。(3)(2)の効果による、10^{15}太陽質量の天体の数は最大でも5%程度である。これらのことよりニュートリノ質量の天体の個数に対する非線形効果影響は線形効果と比べて十分小さいことが明らかにできた。
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