研究概要 |
本年度の研究では,Robbert Dijkgraaf氏と共同で,体積予想と位相的開弦理論との間の新たな対応を提唱し,その結果を論文にまとめ,発表をした,この対応は,結び目理論において発見された体積予想とその一般化に基づいて考察を進めたものである.体積予想は結び目不変量の一つである,色つきJones多項式のWKB解析を行う理論であり,WKB展開の各係数がその結び目の補空間に対する位相不変量を与える点にある.特にWKB展開のleading項は補空間の体積を与えることから体積予想と呼ばれ,近年はsubleading項以降の計算も研究されている.また,体積予想の一般化では,結び目補空間の基本群から定まる特性多様体のAbel-Jacobi写像との関連が指摘され,結び目不変量と代数多様体の関連が明らかになりつつある状況にある.本研究では,特性多様体のAbel-Jacobi写像と位相的開弦理論のdisk不変量との関係に着目し,一般に色つきJones多項式のWKB展開と位相的開弦理論のWKB展開の等価性を提案した.物理的には,色つきJones多項式はSU(2) Chem-Simonsゲージ理論のWilson loop期待値との関係が知られていることから,我々の提案は,Cnern-Simonsゲージ理論の双対記述を与えると期待している.この論文の発表後は,位相的弦理論のWKB展開をさらに高次(4次項)まで計算し,色つきJones多項式の漸近展開の対応する項との対応を考察した.その結果,位相的開弦理論のプロパゲータに現れる定数を修正することによって,両者が一致することを確かめた.
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