ニュートリノを伴わないダブルベータ崩壊探索を目指して、高エネルギー分解能のテルル化カドミウム(CdTe)半導体検出器の開発を行った。 前年度に製作した5mm角の素子を用いてダブルベータ崩壊探索の妨げとなる背景事象の評価を行った。アクティブなベトにより宇宙線事象を除去し、また鉛による遮蔽後、環境放射線の40K等が観測されたが、特に素子起源の背景事象は検出されなかった。 波形補正法の改善を行い、エネルギー分解能を向上した。また分解能の評価法の改善を行い、より定量的に分解能を評価できるようになった。 新しく製作した15mmx15mmx10mm角の素子の性能評価を行った。5mm角素子に比べて、エネルギー分解能が悪いという結果が得られた。すなわち、1.3MeVのガンマ線に対して、5mm角素子では1.4%(FWHM)の分解能であったのが、新しい大型素子では3.9%であった。素子のエネルギー分解能の向上のため、分解能、ノイズ、正孔の易動度、捕獲率等の温度依存性、バイアス電圧依存性を測定した。これらの結果を元に、リシミュレーションよる信号波形の再現等を行い、分解能を悪化させているのは、リーク電流および正孔の捕獲が主要因であることをつきとめた。リーク電流の低減には、バイアス電圧を下げる方が有利であるが、正孔の捕獲は顕著になる。低温にすることでも、リーク電流は低減されるが、正孔の捕獲が顕著になるという現象が観測された。したがって、エネルギー分解能を向上するためには、低温でも正孔の捕獲が起こりにくい素子を開発する必要があるという結論に至った。
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