本年度は、前年度に引き続き、我々の銀河系内にある超新星残骸やパルサー星雲などのガンマ線天体の観測と結果の理論的解釈の研究、および、衝撃波粒子加速の理論的研究を行い、宇宙線電子および陽子成分の加速機構に対する知見を得た。おもな成果は次の通りである。 1.年齢数万年程度の超新星残骸W28のGeV帯域ガンマ線観測を行い、詳細スペクトルを得て理論の予言と比較した。その結果、宇宙線陽子成分が存在する示唆を得た。さらにW28を含む複数の同程度の年齢の超新星残骸のGeVガンマ線スペクトルを説明する理論的シナリオとして、「宇宙線逃走シナリオ」と「2次的衝撃波による2段階加速シナリオ」の2つを提唱した。 2.宇宙線変性衝撃波を背景プラズマと宇宙線成分の2流体近似で取扱い、衝撃波から逃走した宇宙線エネルギーの割合と衝撃波圧縮比の間の関係をシンプルに導出することに成功し、宇宙線圧力が高くなるのはごく限られたパラメータ領域の場合であることを示した。 3.パルサー星雲は年齢とともにX線サイズとガンマ線放出効率があがり、X線放出効率がさがるということを発見しパルサー近傍での高エネルギー電子生成過程について新たな観測的制限を取得した。この結果の一つの解釈として、宇宙線電子の移流・拡散を考えるモデルを考案した。 4.完全垂直衝撃波と準垂直衝撃波の2次元プラズマ粒子シミュレーションを行い、shock reformation過程がどちらの場合でも起こりうることを示した。
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