研究課題
本年度は、前年度に引き続き、我々の銀河系内にある超新星残骸やそれに付随するパルサー星雲などのガンマ線天体の観測と結果の理論的解釈の研究、および、衝撃波粒子加速の理論的研究を行い、宇宙線電子および陽子成分の加速機構に対する知見を得た。おもな成果は次の通りである。1.年齢数万年程度の超新星残骸Cygnus LoopおよびG8.7-0.1のGeV帯域ガンマ線観測を行い、詳細スペクトルを得て理論の予言と比較した。その結果、宇宙線陽子成分が存在する示唆を得た。これまでに提唱されたGeVガンマ線スペクトルの折れ曲がりを説明する理論的解釈のうち、「宇宙線逃走シナリオ」と「2次的衝撃波による2段階加速シナリオ」は観測結果と無矛盾であることを示した。2.年齢1000年程度の若い超新星残骸RX J1713.7-3946のGeV帯域ガンマ線観測を行い、単純な陽子起源モデルとは矛盾するガンマ線スペクトルを取得した。さらに、このガンマ線データに加え、これまでに得られているX線のスペクトル、空間分布、時間変動などの観測事実も含めて、無矛盾に説明する陽子起源のモデルを提唱した。3.全部で12個の超新星残骸のシンクロトロンX線の放射強度を超新星残骸の半径の関数としてプロットすると、半径が約10パーセクより大きくなるとシンクロトロンX線が急激に暗くなることを示した。さらに得られたプロットは、セドフ期にある衝撃波で電子が冷却支配的に加速されているとすると自然に説明できることを示し、加速された電子のエネルギー総量は10の47-48乗エルグであると見積もった。4.完全垂直衝撃波と準垂直衝撃波の2次元プラズマ粒子シミュレーションを行い、衝撃波ドリフト加速および、変形二流体不安定を介した電子-陽子スケール間結合が衝撃波遷移層で重要となる可能性を指摘した。
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http://www.phys.aoyama.ac.jp/~ryo/papers/index.html