研究概要 |
原子核の寿命測定を行うことで,質量数150近傍希土類核の原子核構造を明らかにすることが研究の目的である.今年度は,LaBr3シンチレーション検出器を用いた寿命測定装置を開発することに主眼をおいて,研究を行った.LaBr3検出器はエネルギー分解能がシンチレータの中で最良であり,また応答時間も高速であるため,遅延同時計数法による寿命測定に適すると考えられる.作成した時間差計測装置は,LaBr3をガンマ線測定器に,プラスチックシンチレータをベータ線測定器としたものである.Co-60およびCs-134を線源に,各種金属をX線コンバータとして用い,オフラインでその時間特性を調べた.現時点で600-1300keVのガンマ線に対する時間分解能は400ps程度,数10keVのX線に対しては1ns程度という結果が得られている.このことから,本測定装置は1ns程度弱までの寿命測定に使用できると判断できる.しかしながら,(1) 時間スペクトルのピーク位置の不自然な変動,(2) シンチレータからの波高値が小さいため,50keV程度以下のガンマ線(X線)の測定が困難という問題が生じている.(1)の原因を調べそれを解決するとともに,高速応答アンプを使用するなどして(2)を改善することが必要である.その上で,22年度は京大原子炉オンライン同位体分離装置と本計測装置を組み合わせて,希土類核の寿命測定を行う予定である.そのための共同利用申請を行い,プロジェクト分担課題に採択された.
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