本研究の目的は、大型化が可能であり中性子を高確率で検出できる新規開発の無機シンチレータ結晶LiCaAlF_6の基礎特性を評価し、硬X線検出器の周囲に中性子用アクティブシールドとして配置することで、反同時計数から中性子バックグラウンドを効率的に除去して検出器の性能を向上できることを世界に先駆けて実証することである。 昨年度までに数cmサイズの大型LiCaAlF_6 (Eu)とBGO結晶シンチレータを組み合わせた中性子用フォスウィッチ検出器を作成した。地上で中性子・ガンマ線・α線への応答を調べた後、PoGOLite気球実験にこの検出器に搭載することができており、アクティブシールドとしてどれだけ効果的に中性子バックグラウンドを低減できるかの実測、大きな有効面積を活かした大気中性子のフラックス自体の計測を実施する準備が整っていた。 今年度は、当初の予定ではPoGOLite気球を8月にスウェーデンから放球する予定であり、私を含むPoGOLiteチームも万全の態勢でその機会を迎えつつあった。しかしながら、オーストラリアで起こったNASAの放球の失敗事故を受けて、放球システムの点検のため全世界的に今夏の放球がキャンセルになったため、我々のフライトも1年延期されることになってしまった。(なおオーストラリアの事故の原因は、我々のPoGOLite気球実験とはまったく関係がない。)そこで延期されてできた時間を有効に利用して、実験室においてキャリブレーションを大量に取得し、検出器の設定パラメータへより詳細なフィードバックをかけた。またフライト中に検出器の健康診断を簡単に行えるようソフトウェアの開発を行った。
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