超紐理論に存在するモジュライと呼ばれる場が、インフレーションを起こす場の崩壊率を揺らがし、そのことにより宇宙の密度ゆらぎが生成される場合には、グラビティーノが暗黒物質になることが難しいことを示した。グラビティーノはインフレーション後の再加熱期に、インフレーションを起こす場の崩壊から直接作られるか、または、熱浴から生成されるが、いずれの場合にもその存在量が再加熱温度に依存して決定される。その結果、モジュライの揺らぎが宇宙の密度揺らぎの大きさを決定する場合には、グラビティーノが暗黒物質の大部分であるとすると、非常に大きな等曲率ゆらぎが生成されることになり、観測と矛盾してしまう。宇宙の密度ゆらぎが、インフラトンとモジュライの両方の揺らぎから生成される場合には、この等曲率揺らぎの制限を回避することができるが、PLANCK衛星により等曲率揺らぎが発見されないとすると、密度揺らぎの非ガウス性が観測出来ないほど小さくなることも示した。 また、重力の量子論を繰り込み可能にするようにHoravaにより提唱された理論におけるprojectability条件を化したモデルに対して、曲率揺らぎを定義し、その超ハッブルスケールでの進化方程式を導き、保存する条件を求めた。その結果、積分定数として現れる物質が現実の宇宙の暗黒物質であるときには、初期条件に微調整をしない限り、等曲率揺らぎが大きくなりすぎ観測と矛盾してしまうことを示した。
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