研究概要 |
昨年度に引き続き、自己重力系を中心とした長距離力系の進化、緩和過程、平衡状態について考察した。 球状星団のモデルとして、エネルギー分布を有限の範囲にとどめたKingモデルがよく用いられる。我々は粒子の集団が及ぼす力を考慮したLangevin方程式を立て、その定常解としてKingモデルに対応する密度分布が与えられる事を示した。この分布は、専用プロセッサを用いた多体問題のシミュレーションの結果ともよく合う。また、多体問題の1つの粒子の質量を他の粒子の質量の5~10倍にしても、密度分布に大きな影響を与えないことを示した(Tatekawa and Tashiro, 2010 ; 2011)。 また、2次元HMFモデルと呼ばれる「負の比熱」のエネルギースケールを持つ、長距離力系のモデルの力学的進化、緩和過程、および平衡状態の解析を行った。多体問題によるシミュレーションを実施したところ、時間変化が非常にゆっくりで、準平衡状態とみなすことが出来る緩和過程が存在することが分かった。一方、非加法的統計力学がこの準平衡状態をうまく表せるかどうかを検討した。この結果、「負の比熱」のエネルギースケールでは、非加法的統計力学によるフィッティングがある程度うまくいき、時間とともにBoltzmann統計に収束していくことが分かった。一方で「正の比熱」のエネルギースケールでは、非加法的統計力学ではフィッティングできないことが分かった(Tatekawa et al., in preparation)。 平成22年度は前半の自己重力系の進化について学術論文をまとめ投稿している。また、2次元HMFモデルの進化については国際会議発表を行った。こちらの結果は現在、学術論文としてとりまとめているところである。
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