ニュートリノ振動等の標準理論を越えるニュートリノの性質を研究する上で、ホウ素8起源の太陽ニュートリノスペクトルは最も重要な観測量の一つである。Super-Kamiokandeにおける測定で最も大きな不確かさの要因の一つは、ホウ素8からニュートリノが出た瞬間のスペクトルの形状因子である。ホウ素8のβ崩壊に作用する核行列要素である弱磁気項と軸性電荷を精度よく決めればその不確かさを減らす事ができる。ニュートリノスペクトルへの弱磁気項と軸性電荷の補正項は、以前に2度評価されており、低エネルギーを基準にすれば最大10%の補正である。補正項の主要項である弱磁気項は、通常のβ崩壊では一定値となるが、ホウ素8のβ崩壊では終状態が約16MeVという非常に広い分布を持つため、エネルギーに依存した項となる。これまではアナログγ遷移の実験結果から推定していたため、弱磁気項のエネルギー依存性の再現性を実験的に検証するのは困難であった。本研究ではβ線核分光実験から弱磁気項のエネルギー依存生を直接的に決定し不確かさを評価する事を目指している。弱磁気項と軸性電荷を決定するためにホウ素8とリチウム8について測定されたβ線角度分布中の整列相関項とβ遅延α線角度相関項の結果を用いた、鏡映核対であるホウ素8とリチウム8および2つの角度相関項はそれぞれ相補的関係にあるため、寄与する他の核行列要素の影響を受けずに導出する事ができる。これらのβ線角度相関項を組み合わせて弱磁気項と軸性電荷を導出した。弱磁気項については2パラメータを含む定式化をして最少2乗法によりパラメータを決めた。実験的に得られたのはβ線のエネルギーについての依存性であるため、決定したパラメータを用いてニュートリノのエネルギー依存性を導出し、不確かさの評価を行った。この結果を用い、ニュートリノスペクトルへの補正項を計算した。
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