ニュートリノ振動等の標準理論を越えるニュートリノの性質を研究する上で、ホウ素8起源の太陽ニュートリノスペクトルは最も重要な観測量の一つである。Super-Kamiokandeにおける測定で最も大きな不確かさの要因の一つは、ホウ素8からニュートリノが出た瞬間のスペクトルの形状因子である。 以前計算されたニュートリノスペクトルでは、この形状因子に寄与する核行列要素である弱磁気項及び軸性電荷をホウ素8および鏡映核であるリチウム8のβ崩壊から導出する事が出来ていなかった。今研究での改善点は、弱磁気項と軸性電荷を新たな手法でβ崩壊から決定する事である。そのために、2種類のβ線角度分布測定を用いた。まず1つめは、核スピン整列した原子核からのβ線角度分布から導出される整列相関項である。以前測定した整列相関項測定について実験手法・解析等の詳細をまとめた論文をPhysical Review Cへ投稿し、査読中である。ホウ素8及びリチウム8に対する整列相関項測定は、世界初で唯一である。2つめは、β遅延α線に対するβ線角度相関項であり、McKeownらの測定結果を用いた。2種類のβ線角度分布測定結果から弱磁気項と軸性電荷を導出する解析は、投稿中の論文でも行ったが、ニュートリノスペクトルへは弱磁気項が最も大きく寄与するため、再解析を行った。投稿中の論文では弱磁気項のβ線のエネルギー依存性は、フィットのパラメータとしていなかったが、再解析ではパラメータとして導出した。 次に、Winterらが計算したホウ素8のニュートリノスペクトルを論文の記述に従い再計算し、スペクトルの形状及びその不確定性を今回の計算コードで確認した。そして、今回決めた弱磁気項と軸性電荷を用い、ホウ素8のニュートリノスペクトルの計算および系統不確かさの評価をおこなった。この結果をまとめた論文を執筆中である。
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