研究課題
1、時空特異点付近では、重力あるいは曲がった時空の場の量子論的な効果によって有効的にエネルギー条件が破れる可能性が指摘されている。その場合、ワームホールという時空構造が可能になる。我々はワームホール天体を重力レンズ効果によって通常の天体から識別する可能性に注目し、重力レンズの詳細な観測によりワームホールと通常の質点の識別が可能であることを示し、ワームホールの存在数に新たな制限を与えるなどの成果を収めた。2、高速回転するブラックホールが粒子加速器として働くという事に注目し、ブラックホール付近に磁場がある場合に荷電粒子がどのように加速されるかを調べ、磁場と回転の相乗効果によって加速が強められることを示した。3、高速回転ブラックホールの周りで二つの中性粒子が衝突する場合に、その重心系での衝突エネルギーは非常に大きくなれるのだが、その結果無限遠に放射される粒子のエネルギーや質量は大きくなれないことを示した。一方、荷電ブラックホールの周りで二つの荷電粒子が衝突する場合にはこのような上限は存在せず、非常に重く非常にエネルギーの高い粒子が放出されることが原理的には可能であることを示した。4、Einstein方程式の円筒対称真空解であるEinstein-Rosen波に繰り込み群の手法を適用し、自己相似解を見つけ出してその安定性を調べ、ある局面では自己相似解が一般的な解の漸近的振る舞いを表すことを示した。5、球対称ダストの重力崩壊では一般には無限遠から観測可能な特異点が形成され弱い宇宙検閲仮説が破れる。我々は、宇宙物理学的な重力崩壊過程としての星の終末に注目し、その際の重力崩壊の初期パラメータ値を採用して球対称ダストの重力崩壊を再解析した。その結果、特異点は常にブラックホールに隠されてしまい弱い宇宙検閲仮説が破れないことを示した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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巻: D87 ページ: 024024
DOI: 10.1103/PhysRevD.87.024024
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