研究課題
本年度は、軽い原子核における核力の働きを調べた。1.^<16>Oの構造:原子核の構造の一つにαクラスターが発達した状態がある。最近、αクラスター状態を同定する新しい方法として大きな単極子遷移量が提案されている。本課題はそれに関連して、^<16>Oをαクラスター状態を含まない殻模型で記述したときに、大きな単極子遷移量を担う状態が得られるかどうか調べた。得られた結果は、様々な有効相互作用を用いても大きな単極子遷移に対応する状態は得られないことが結論付けられた。次の段階としてクラスター状態を含めることで単極子遷移の記述が改善し、クラスター相関が見えるのかどうか調べることが挙げられる。2.He同位体の構造:テンソル最適化殻模型(TOSM)を用いてHe同位体(^4He-^8He)に現れる構造とテンソル力の働きの関係を調べた。相互作用には自由空間の核力を用いて第一原理計算を行った。短距離斥力はUCOMで扱った。得られた結果は、^5HeをはじめとするHe同位体で現れるp波のLS分岐エネルギーの生成にはテンソル力の効果が大きいことが分かった。テンソル力の寄与が大きい状態は、He同位体の基底状態近傍に現れ、それらの状態はテンソル力が生む高運動量成分を多く含むことが分かった。一方、励起状態ではテンソル力の効果が弱く、高運動量成分が少ないことが分かった。すなわち高運動量成分の測定によりテンソル力の効果を確かめられることが示唆された。
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