研究概要 |
現在稼働中の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の実験ではヒッグス粒子の痕跡が見つかり始め,大余剰次元宇宙モデルに基づくブラックホール形成の期待も高まっている。本研究はブラックホール形成が発見された際に実験と理論を比較し,高次元理論の確立,超弦理論の直接検証を目指して理論面での研究を進めるものである。 今年度は本研究の最終年度として前年度までの研究結果をふまえて以下の研究を行った。 1.Einstein-Gauss-Bonnet-Maxwell-dilaton系での静的ブラックホール解の解析 時空構造,熱力学的な性質,極限ブラックホール解の存在を詳しく調べた。特に余剰次元が何次元であるのかを実験と比較できるように次元依存性を明らかにした。また,ブラックホールの温度が非常に低くなるが,極限ブラックホールまでは進化せずに,特異性が現れることがわかった。これはLHC実験でのブラックホール蒸発相の研究で非常に重要と思われる。 2.dilaton場を含んだGauss-Bonnet系におけるADM形式の定式化 方程式の構造は非常に複雑であるが,変数をまとめて,実際に基礎方程式を得ることができた。 3.Gauss-Bonne項を含んだ5次元時空におけるスカラー場の動的なシミュレーション 物質場が重力崩壊して,その後,事象の地平面が形成されブラックホールになるというシナリオである。前年度からの継続研究である。解に不安定が取り除かれずに物理的な議論にまで至っていないが,ホライズン形成の前まで数値シミュレーションで追うことができた。
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