研究課題/領域番号 |
21740197
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研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
梅津 裕志 釧路工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (90393420)
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キーワード | ブラックホール / 量子重力 / 共形場理論 / 行列模型 |
研究概要 |
この研究の主要な目的は、ホーキング輻射やブラックホールエントロピーなどのブラックホールの熱力学的性質を、時空の地平近傍の有効理論などを用いて解析し、時空の微視的構造と重力の量子論的性質を理解することである。ブラックホールが有限なエントロピーを持つことなどから、量子重力理論には時空の離散的性質が現れると期待される。離散的性質を持つ時空を記述する一つの方法として非可換時空上の場の理論がある。これまでに様々な非可換空間の構成方法が提案されているが、場の理論の計算が具体的に実行できる場合は非常に限られていた。平成23年度は、Karabegovによって提唱されたケーラー多様体の非可換変形について研究し、任意次元の複素射影空間と複素双曲空間の場合に、場の間の非可換積の具体的な表式を与えた。この表式は非可換変形のパラメータの全ての次数に対して具体的に書かれている。更にこの非可換積の下での関数の間の代数を詳細に調べた。真空への射影演算子に対応する関数を同定し、それに生成消滅演算子に対応した関数を作用させることにより、非可換積のフォック表現を構成した。我々の非可換積の構成において非可換パラメータは形式的な変数として導入されているが、これを特定の値にとると行列模型を用いた非可換射影空間の構成と一致することを示した。従って、本研究で構成した非可換射影空間は行列模型による構成の一般化になっている。また本研究で与えた非可換積の構成の特徴は、複素射影空間の非斉次座標で具体的に書かれていることである。非可換空間上の場の理論を解析する上でこのことは大きな利点であり、今後、量子論的な性質を研究する上で有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複素射影空間と複素双曲空間上の非可換積を具体的に構成することに成功したが、この空間上の場の理論や重力理論の量子論的な解析を行うことが、今後の課題として残っている。
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今後の研究の推進方策 |
非可換変形をした複素射影空間と複素双曲空間上の場の理論を構成し、量子論的解析を行う。また、これらの非可換空間における場の理論のソリトン解や、ゲージ理論のインスタントン解などを調べる。これらの解析を重力理論に適用し、重力の量子論的性質を研究する。特にブラックホールの時空の地平近傍の場の理論への応用を行う。
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