研究課題
この研究の主要な目的は、ホーキング輻射やブラックホールエントロピーなどのブラックホールの熱力学的性質を、時空の地平近傍の有効理論などを用いて解析し、時空の微視的構造と重力の量子論的性質を理解することである。ブラックホールが有限なエントロピーを持つことなどから、量子重力理論には時空の離散的性質が現れると期待される。離散的性質を持つ時空を記述する一つの方法として非可換時空上の場の理論がある。これまでに様々な非可換空間の構成方法が提案されているが、場の理論の計算が具体的に実行できる場合は非常に限られていた。平成24年度は、前年度までに行なった任意次元の複素射影空間と複素双曲空間の量子変形の研究を継続し、これらの非可換空間上の場の理論の構成について研究を行った。我々が導出した非斉次座標の間の非可換積の構造がBordemann等によって与えられた斉次座標の間の非可換積と等価である事を具体的に示した。また、この変形量子化の方法をより一般的なケーラー多様体に対して適用する方法を研究した。ゲージ場の理論における重要な古典解としてインスタントン解がある。我々は複素射影空間上の非可換インスタントンの構成を行なうために、まず可換な複素射影空間の場合のインスタン解の構成法について研究した。一般的な構成法はツイスター空間上の正則ベクトル束を用いて記述されるが、我々はその情報から具体的にインスタントンに対応するゲージ場を構成に、様々な場合に自己双対条件が満たされていることを示した。この構成法を非可換な複素射影空間の場合に適用し、特定の場合には非可換インスタントンを構成できることが明らかになった。インスタントン解はゲージ場の量子論の非摂動効果を解析する上で重要な役割を果たすと期待される。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Mathematical Physics
巻: Volume 53 ページ: 073502-1, 16
10.1063/1.4731236