研究課題
本研究の目的は,重力理論と量子力学とを整合的に融合した「量子重力理論」の候補と考えられている超弦理論を用い,ブラックホールや初期宇宙における重力の量子効果を明らかにすることである。そのために私達は,「座標同士が非可換性を持つ空間上の場の理論」について研究を進めてきた。非可換空間の存在は超弦理論から示唆され,重力を量子化した場合に自然に現れると考えられるからである。今年度私達は特に,ファジーディスクと呼ばれるオブジェクトに注目した。これは非可換性を持つ空間の部分空間で,円板状をしている。先攻研究において,このファジーディスクはD0ブレーンという,超弦理論から存在が示唆されている粒子状の物体の集合体と同一視できることがわかっていた。以前私達は非可換空間上で定義された宇宙項のみの重力理論を提唱し,その非自明な解として有限な半径で区切られた円板状のミンコフスキー時空が得られることを見出したが,今年度私達は,その解がファジーディスクと同一視できることを発見した。さらに私達はこの点について研究を押し進め,量子光学で知られているPB位相演算子を応用して,扇形のソリトンによってファジーディスクを分割できることを示した。これは,Dブレーンが従来知られていたものとは異なる配位を持ち得る可能性を示唆している。さらにファジーディスクだけでなく,中央部に穴の空いたファジーアニュラスなど,様々な形状のオブジェクトも構成出来ることを示した。加えて,このソリトンと光渦というレーザー光の強度分布が同じ配位を取ることもわかった。これによりレーザー光という扱い易い道具によって,時空の非可換性,すなわち量子重力現象の一端について知見が得られる可能性を見出した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Journal of HIgh Energy Physics
巻: 未定 ページ: 未定(全25頁)
Proceedings of the 22th Workshop on General Relativity and Gravitation
巻: 1 ページ: 体裁未定
Proceedings of the 13th Marcel Grossmann Meeting on Recent Developments in Theoretical and Experimental General Relativity
巻: 1 ページ: 未定(全3頁)