本研究では、宇宙背景放射(CMB)偏光観測に用いる観測機器の精密較正のための基準偏光源の開発を行う。この基準偏光源は、エコソーブと呼ばれる黒体輻射源を冷却して10K程度の黒体輻射を発生し、それを金属板で反射させる事でCMBを模擬した偏光波を発生させる物である。従来の偏光源では主に液体窒素を用いてエコソーブを冷却しているが、77Kという温度は、実際の観測サイトでの環境(~10K)と大きくかけはなれているため、実験室でのコミッショニングを困難にしていた。次世代のCMB実験では1000個以上の検出器を扱うため、実験室での性能評価とそれを元にした観測計画(スキャン方法等)の設計は不可欠であり、実際の観測環境を再現する較正源が求められる。 本年度は、昨年度作成したプロトタイプシステムの原理検証として、実際にQUIET実験で用いている検出器を使い、予想通り偏光波が生成できている事を確認した(10Kの強度で~100mKの偏光波を生成する較正源は世界初である)。また、実際に検出器の較正を行い、次世代のCMB実験が要求する精度での較正が可能である事を確認した。来年度は、QUIET-II用の検出器の性能評価を行うと共に、システム開発の結果を論文にまとめて報告する。また、国際学会等での報告やウェブ等での情報発信を継続して行う。
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