研究概要 |
本研究では、宇宙背景放射(CMB)偏光観測に用いる観測機器の精密較正のための基準偏光源の開発を行う。この基準偏光源は、エコソープと呼ばれる黒体輻射源を冷却して10K程度の黒体輻射を発生し、それを金属板で反射させる事でCMBを模擬した偏光波を発生させる物である。従来の偏光源では主に液体窒素を用いてエコソープを冷却しているが、77Kという温度は、実際の観測サイトでの環境(~10K)と大きくかけはなれているため、実験室でのコミッショニングを困難にしていた。次世代のCMB実験では1000個以上の検出器を扱うため、実験室での性能評価とそれを元にした観測計画(スキャン方法等)の設計は不可欠であり、実際の観測環境を再現する較正源が求められる。 本年度は、昨年度原理検証を行って期待通りの性能を有している事を確認したプロトタイプシステムを用いて、QUIET-II実験で使用予定の検出器の較正を行った。観測サイトと同じ輻射環境下での検出器性能の評価は世界での初めての成果であり、結果を纏めて低温検出器に関する国際会議(LTD13)や素粒子・宇宙検出器に関する国際会議(TIPP2012)等でポスター発表した。また、システム開発に関する技術論文をジャーナル誌(Review of Scientific Instruments)に投稿し受理されている。 さらにこれまでQUIETで取得したデータを用いた原始重力波起源のCMB偏光パターンの探索結果をジャーナル誌(ApJ,741,111)に投稿し受理されている。
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