観測的・理論的な研究により、我々の宇宙にはB~10^<15>Gもの超強磁場を持つ中性子星である「マグネター」が提案されている。本研究の目的は日本のX線天文衛星「すざく」を用いた観測的研究により、陽子のサイクロトロン共鳴散乱による吸収線を発見し、マグネターの磁場強度を直接的に測定することである。これは世界初の大発見になるだけでなく、B>4.4×10^<13>Gでのみ可能な物理学の研究が初めて現実となる「宇宙の超強磁場実験場」の開拓になる。 SGR 0501+4516は発見後しばらく活発なバースト活動を示していた。私は即座に「すざく」衛星を用いた緊急観測を提案し採択され、2008年8月26日に実施された。昨年度の研究により、31個(全32個)の暗いバーストのスペクトルから、これまで定常放射にのみ見出されていた硬X線放射を初めて検出した。これによりバーストと定常放射のスペクトルは、ソフト成分の二温度黒体放射だけでなく、ハード成分は硬X線放射の共通点を持つことを明らかにした。また、各成分の光度が比例する事を明らかにした。これらの研究成果は、バーストと定常放射が基本的に同じ機構で生成され、定常放射は多数の極小バーストで構成されるという我々の仮説を支持する。今年度は、これらの研究成果を投稿論文にまとめた。現在、査読中である。 今年度は全天X線監視装置MAXIにより観測した全てのマグネターのデータを解析した。その結果、少なくとも2天体は有意に検出できており、詳細な解析を行っている。また、今年度はマグネターが活発なバースト活動を示した際に行う観測の事前提案を行った。評価Aで採択された。
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