研究概要 |
観測的・理論的な研究により、我々の宇宙にはB~10^15Gもの超強磁場を持つ中性子星である「マグネター」が提案されている。本研究の目的は日本のX線天文衛星「すざく」を用いた観測的研究により、陽子のサイクロトロン共鳴散乱による吸奴線を発見し、マグネターの磁場強度を直接的に測定することである。これは世界初の大発見になるだけでなく、B>4.4×10^13Gでのみ可能な物理学の研究が初めて現実となる「宇宙の超強磁場実験場」の開拓になる。 私を含む研究グループは「すざく」衛星を用いてマグネターであるSGR O501÷4516とAXP 1E 1547.0-5408の観測を実施した。バーストと定常放射のエネルギースペクトルに明確な吸収線はm見られなかったものの、暗いバースト(10^-8 erg/cm^2/s)のX線スペクトルに初めて硬X線成分を発見した(SGR 0501+4516:Nakagawa et a1. 2011,PASJ 63,S813、AXP 1E 1547,0-5408:Enoto et al. submitted)。しかし、これまでに明るいバースト(10^-6~10^-7 erg/cm^2/s)では硬X線成分は報告されていない。そこで、HETE-2衛星がSGR 1806-20とSGR 1900+14から検出した55個の明るいバースト(Nakagawa et a1.2007.PASJ 59,653)のX線スペクトルを再解析した。その結果、一部のバーストは二温度黒体放射+硬X線成分でよく再現され、明るいバーストほど硬X線成分の光度よりも二温度黒体放射の光度が大きくなる可能性があることを見出した。これらのバーストのエネルギースペクトルに吸収線が見られるかなどを調べるため、より詳細な解析を進めている。
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