原子核の基底状態は通常殻模型的構造を持つことが知られており、密度の飽和性に基づいて液体的構造を有している。これに対し、励起状態にα粒子からなる気体的クラスター構造状態が生じ、更にそれらが最低エネルギー軌道を占有する、α凝縮現象が起こることが最近になって知られるようになった。これは今まで議論されたことのない全く新しい構造であり、現在まで、ホイル状態と呼ばれる^<12>C原子核の第二0^+状態でそのような量子状態が実現されていることが明らかになっている。 このような状態を最適に記述するための微視的模型波動関数が知られているが、本研究ではその模型波動関数の有用性をいくつかの核で詳細に調べた。その結果、^<12>Cを含め、^<16>O原子核の励起状態でα凝縮描象が非常によく成り立っていることを、核子間の自由度に基づいて多角的側面から示した。特に^<16>O原子核においては我々が開発した共鳴状態の取り扱う処方箋を用いて、4つのα粒子からなる4α凝縮状態の存在を微視的側面から示した。それと共にその波動関数の性質を一体密度行列等を用いて詳細に調べ、α凝縮度等を定量的に議論した。 一体密度行列の定義は、重心自由度を含まない有限系について今まで不十分にしかなされていなかった。有限系でのα凝縮度の評価を正しく行うため、一体密度行列を有限系でいかに定義すべきかの議論を行った。Jacobi座標を用いた定式化を行うことで無限系での定義となめらかに接続されるごく自然な定義が可能であることを示した。
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