本研究では、短寿命の不安定偶々核の第一励起2+状態に対してTransient-Field法(TF法)を適用し、核磁気モーメントの測定を行う。核磁気モーメントの系統的な測定から中性子過剰核における特殊な核構造の発現機構の解明を目指す。本研究で用いるTF法とは、不安定核ビームが磁性体薄膜を通過する際、薄膜中の偏極電子と重イオンの核スピンの間の超微細相互作用によって生じる数kTに及ぶ強磁場を利用する手法である。TFの強磁場によりスピン整列核をガンマ崩壊するまでの間に歳差運動させ、その回転角度をガンマ線の異方性の変化から決定(摂動角分布法、PAD法)し、核磁気モーメントを導出する。 本研究の開発要素としては、ガンマ線角度分布測定装置の開発と、その装置に対してTF法を適用することの二段階が必要である。本年度はその第一段階としてガンマ線角度分布測定装置の設計開発を行った。本装置は、全角度に設置可能なGe検出器の回転機構と、あらゆるGe検出器の配置に対応するためのマグネットの回転機構からなる。本装置はまず来年度に予定されている寿命が数100nsと比較的寿命の長いアイソマー状態の核磁気モーメント測定実験に使用される。本装置は汎用性の高い設計となっているため、今後のあらゆるPAD実験に適用可能であり、さらに海外との共同実験にも使用される予定である。今後、本研究で目的とする短寿命の励起状態の磁気モーメント測定に向け、TF法の適用という第二段階の開発を行っていく予定である。
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