研究概要 |
これまで進めた^<12>Beの研究から、その高励起領域には、二つのα粒子をコアとし、その周りで過剰中性子が共有、原子、イオン結合に類似した様々な化学結合的配位を形成しており、更に対応する準位群は、強い縮退性を持って共存することが明らかになった。こうした化学結合状態の縮退現象は、中性子の分離エネルギーの小さいドリップライン近傍核に系統的に発現する可能性が極めて高い。 こうした背景を踏まえ、中性子過剰系の高励起状態の縮退現象の研究を現在進めている。本研究で採用される「一般化二中心クラスター模型」は、二中心系の周りでの中性子のイオン、原子、共有結合構造を統一的に記述可能であり、更に原子軌道状態の衝突による共有結合状態の形成といった、反応現象をも包括して分析が可能な模型である。これまでは主に^<12>Beの計算を行っていたが、昨年度模型の拡張に成功し、より中性子数の多い系への適用が可能となった。拡張された模型をより重いBe同位体^<14>Be=α+α+4N、^<16>Be=α+α+6N系へ適用し、励起エネルギーの増大に伴う化学結合構造の変化、また^<14>Be=^6He+^8He、^<16>Be=^8He+^8Heの散乱過程に発現する共鳴現象の分析を進めた。その結果、偶Be同位体、^<8,10,12,14,16>Beでは、束縛状態領域では、殻模型状態と共有結合状態の競合現象が明らかになり、また連続エネルギー領域には^xHe+^yHeといったHe同位体の「核二量体」が形成されることが明らかになった。 これらの成果の一部は、昨年度6月にベルギーで開催される国際会議「SOTANCP2」、同年9月にイタリアで開催された「日伊合同ワークショップ」等で発表し、議事録などにも発表されている。また一方、^<12>Beの単極遷移の増大現象にも着目した研究を進めており、すでに一編の学術雑誌に掲載予定となっている。
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