8Beは非束縛核であり有限寿命で2つのα粒子の崩壊するが、それに中性子を付与したBe同位体では、二つのα粒子が過剰中性子につなぎとめられて束縛する。これは丁度二原子分子に現れる電子の「共有結合」と類似しており、こうした共有結合描像は主に基底状態近傍において成立していると考えられている。 しかしながら、我々の最近の研究により、励起エネルギーの高い領域においては、「原子価結合」や「イオン結合」に類似した多様な化学結合状態が形成され、更に対応する準位群は強い縮退性を持って共存することが明らかになった。こうした化学結合状態の縮退現象は、中性子ドリップライン近傍核に系統的に発現する可能性が極めて高い。 こうした背景を踏まえ、中性子過剰系の高励起状態の縮退現象の研究を現在進めている。本研究で採用される「一般化二中心クラスター模型」は、二中心系の周りでの中性子のイオン、原子、共有結合構造を統一的に記述可能であり、更に原子軌道状態から共有結合状態への転移といった、反応現象をも包括して分析が可能な模型である。これまで偶Be同位体に対してこの模型を適用し、低励起領域から高励起領域に渡る化学結合構造の転移現象を系統的に研究してきた。その結果、束縛状態領域では、殻模型状態と共有結合状態の競合現象が明らかになり、また連続エネルギー領域にはHe同位体からなる「核二量体」が形成されることが明らかになった。 本年度は12Beの最も主要な成果をまとめた論文一編をPhysical Review Cに発表し、海外での国際会議(2回うち1回は招待講演)、国内での国際会議(2回)においても成果報告を行った。また最近理論計算をsd殻系に拡張し理化学研究所の実験グループと共同研究を開始している。昨年行われた実験申請のPACにおいてクラスター状態の観測可能性について理論的サポートを行った。実験は採択され最近測定がなされている。
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