研究概要 |
陽子過剰な不安定Ni,Ge同位体の陽子捕獲反応断面積決定に欠かせない陽子-重イオン同時測定用のストリップ電極付きシリコン半導体検出器の回路系の設計、開発を引き続き行った。原子番号が30前後の重イオンと陽子を同時測定する場合、発生する信号が最小で150keV、最大で200MeVと1000倍以上違うため、ストリップ電極間の信号干渉を小さくしないと陽子の信号が重イオンの信号による干渉によって見えなくなってしまう。よって測定実現の為には隣り合うストリップ電極から前置増幅器間で起こる信号干渉の最小化が欠かせない。 この信号干渉の最小化の為に検出器を固定してあるプリント基板上の配線パターンを工夫した。まずシリコン検出器のストリップ電極の付いていないn側の面を伝って起こる信号干渉を防ぐため、10μFのコンデンサをn側に接続した。また検出器からケーブルに信号伝達するためのプリントパターンの間(0.2mm)にグランド配線を入れ、プリント基板上での信号干渉を小さくした。さらに前置増幅器への信号伝達用のコネクタと信号線に、携帯電話用の小型コネクタと超極細同軸ケーブルを用いることで基板-前置増幅器間での信号干渉も最小化した。 また取り扱う総信号数を減らすため、ストリップ電極3本分の信号をまとめて読み出すこととした。これにより位置分解能が3倍悪くなるが、陽子の標的中での多重散乱により位置広がりが大きいため、位置分解能が3倍悪くなろうとも最終的な検出器系全体の分解にはほとんど影響しない。来年度は完成したプロトタイプを用いて性能テストを行う予定である。
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