平成21年度は、まずストリークカメラの時間分解能の評価方法の検討を行った。時間分解能評価には極短パルス光が通常用いられるが、入射光強度や光パルス長に依存するため明確な評価が難しい。そこで新たな評価方法として、ストリークカメラに入射する光量を極端に減少させ、単一光子イベントが分別できる状態とし、単一光子イベントをストリークカメラで観測した場合時間広がりを観測することで時間分解能を評価する方法を考案した。次に、この方法を適用し、CsI光電面(膜厚300nm)を使用した場合の単一光子イベントの観測実験を行って時間分解能の評価を試みた。実験はSPring-8加速器診断ビームラインIIの単色X線を用い、様々なX線エネルギーにおける単一光子イベントを観測した。多数の単一光子イベントの時間広がりを統計処理するための解析プログラムを独自に開発し、効率的なデータ解析を図った。また、光子検出効率のX線エネルギー依存性も同時に測定・解析した。この結果を、平成21年度に開催された日本加速器学会及び日本放射光学会において発表した。これまでの実験から、単一光子イベントの時間広がりはX線エネルギーに依存する傾向が見られており、これは時間分解能のエネルギー依存性の存在を示唆するものである。こうした報告は過去になされた例がなく、引き続きエネルギー依存性に着目して研究を遂行してゆく。さらに、今年度は、時間分解能・計数効率の膜厚依存性を調査するため、異なる3種類の膜厚のCsI光電面を同時に使用可能なマルチアレイ型Csl光電面を新たに開発した。Au光電面についても、異なる3種類の膜厚の光電面を同時使用する実験を計画しており、そのためのマルチアレイ型カソードディスクを開発した。これらマルチアレイ型光電面を用い、時間分解能と検出効率を最適化する光電面の条件を模索する実験研究を次年度も継続する。
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