研究概要 |
平成22年度は、平成21年度に引き続き、X線ストリークカメラの時間分解能の評価を行った。時間分解能の評価方法としては、一般には極短パルス光をストリークカメラに入射し、その時間応答からストリークカメラの時間分解能を評価する方法が行われるが、そのような短パルスX線を生成することは困難である。そこで、ストリークカメラに入射するX線強度を極端に減少させ、単一光子によるストリーク像を観測し、その時間広がりを解析することで、時間分解能を評価することとした。単一光子は原理的に最もパルス長が短く、かつ最も強度が小さいので、時間分解能の評価に適している。平成22年度は、単一光子イベントの時間広がりの光子エネルギー依存性に着目し、時間分解能の評価を行った。実験に用いたストリークカメラ光電面の材質はCsIであったため、Cs及びIの物性に着目し、Cs,Iの吸収端エネルギー付近(4keV-6keV)及び吸収端エネルギーから離れたエネルギーにおける単一光子イベントの時間広がりについて、系統的な測定を行った。実験は4keVから30keVに渡る広範囲の光子エネルギーに対して行った。これまでの実験結果から、単一光子イベントの時間広がりは4keV-30keVの間でほぼ4ps(FWHM)程度であることが分かった。Cs,Iの吸収端付近における単一光子広がりのエネルギー依存性については、現段階でははっきりとした依存性は見られなかった。これらの実験結果を、平成22年度日本加速器学会及び放射光学会にて発表した。また、平成22年度は、金を用いたマルチアレイ型光電面を新たに開発した。マルチアレイ型光電面を用い、時間分解能の膜厚依存性について今後さらに精査してゆきたい。
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