平成21年度は、電子ビームと結晶の相互作用研究(パラメトリックX線、チャネリング)を行うための実験装置の設計・製作・設置を行った。 (i) 結晶の角度を調整するための、2軸回転可能なゴニオメーター及びそれを収納する真空チェンバーの製作を行った。ゴニオメーターの角度分解能は0.001°以下である。これは、チャネリングを起こす臨界角よりも十分小さい値である。ゴニオメーターは必要に応じてビーム軸から退避させることができるよう、水平移動の可能なステージ上に搭載した。ゴニオメーターチェンバーを電子リニアックに接続しても真空的に問題のないようにするため、ゴニオメーター及びチェンバーは超高真空仕様となるよう設計に注意を払った。 (ii) 結晶をチャネリングした電子は、特徴的な角度分布を持つことが知られている。そこで、結晶透過後の電子ビームのプロファイルを測定するため、ゴニオメーターチェンバーの下流にスクリーンモニタを設置した。実験条件(ビームのエネルギー、結晶の厚さ)によってビームの角度拡がりは変わるが、広い角度範囲に対応できるよう、結晶に近い位置に1台と遠い位置に1台の計2台のスクリーンモニタを用意した。 (iii) 結晶からのX線を検出するための検出器、スクリーンモニタにおけるビームのプロファイルを観測するためのCCDカメラ等測定システムの整備を進めた。 平成22年度から、九州シンクロトロン光研究センターSAGA Light Source (SAGA-LS)のリニアックからの電子ビームを用いて実験を開始する予定である。また、結晶の状態を事前に把握するために、SAGA-LSの電子蓄積リングからの放射光を利用した回折実験も検討している。
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