1次元相関電子系の有機絶縁体、特に光誘起絶縁体金属転移(photoinduced insulator-metal transiti on (PIIMT))のおける(EDO-TTF)_2PF_6(EDO-TTF=エチレンジオキシーテトラチアフルバレン)においての時間分解光電子分光(time-resolved photoemission spectroscopy(TRPES))の研究を理論的に行った。この物質におけるPIIMTは電荷秩序の融解と同時にコヒーレントフォノンの発生を伴うのが報告されて、電荷秩序の融解とコヒーレントフォノンの相関と共にどちらの方がほんとうに金属相に導くかが興味深い問題になった。それで、この1次元有機絶縁体の光誘起超高速動力学の研究を行った。研究結果、電荷秩序の融解とコヒーレントフォノンがお互いに相手を発生させながら、1次元有機絶縁体を金属相に導くのが分かった。特に、TRPESの研究結果はこの系のPIIMTは熱によって、すなわち熱的フォノンによって起こる熱誘起絶縁体金属転移(thermally induced insulator-metal transition(TIIMT))との違いを明確に見せてくれた。さらに、このコヒーレントフォノンの影響はフォノンが全く考慮されないモット絶縁体のTIIMTと比較すればよりドラマティックになる。モット絶縁体と違ってコヒーレントフォノンがあればバンドギャップより遥かに低エネルギー光でもバンドミキシングを起こすのが分かった。これらの結果はコヒーレントフォノンが電子構造にどのような影響を与えるかを明らかにした初めての研究だと考えている。関連論文は米国物理学会のPhysical Review Bに出版されて、学会活動にはICESS-11とGordon Research Conferenceで発表された。
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