本年度は、光スイッチング化合物の合成・物性評価ならびにNMR装置へのレーザー光の導入およびその最適化を目指し研究を進めてきた。 光スイッチング化合物の合成・物性評価では、蛋白質をモデル化した化合物の合成を行い、光反応を調べるなどし、成果を論文として報告した。レーザー光導入に関しては、プローブならびにサンプル管の検討を行った。その結果、レーザー光導入に関わる光導波管の設計を行い、購入した。さらにサンプル管についても反射率を上げるため表面に銀メッキ(銀鏡化)を施すなどしたものを数本作製した。しかし、NMRについては、プローブの故障という不運に遭ったため、レーザー光導入の最適化までは至っていない。故障は、パルス制御基板で起こっており、外部パルス導入によるものの可能性も考えられたため、今後、メーカーとの連携も強め、この経験を活かし、NMRのパルス制御テクニックを含め、装置全体に渡っての理解と操作ができるように進めたい。なお、プローブ故障に伴い、Varianの協力により光導入プローブそのものの情報検索・検討も進めることができた。20年前に作られたCIDNPプローブ以降開発は進んでいないことが分かったこととプローブの内部構造についての情報を得ることができた。これらの情報も加味した上で、プローブが本格稼働を開始できそうな6月以降レーザー光導入を本格化させる予定である。さらに、今回、NMRはVarian社製(四月よりAgilent)を使用しているのだが、アメリカのメーカーゆえ、情報のやり取りの難しさだけでなくプローブをアメリカ本国へ送付したため日数的ロスも発生した。国内にはJEOLがあり、装置開発も含め情報のやり取りをすることを理学部を通じて検討中である。
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