研究課題
本研究の目的は、立方晶にも拘らず四回対称軸を有しない結晶構造を持つ希土類パラジウムブロンズRPd_3S_4(R:希土類)、及びそのRサイトをGd、又はYで置換した化合物を作製し、各種物性測定からRPd_3S_4の多極子物性を明らかにすることである。平成22年度に得られた成果は以下の通りである。(1)PrPd_3S_4がT_M=1.56Kで示す相転移の秩序状態として、反強磁性秩序、または反強八極子秩序のいずれかの可能性をこれまでに提案してきた。磁化や比熱等の巨視的物理量の測定では、どちらの秩序が実現しているのかを判断することが不可能であるため、PrPd_3S_4の単結晶を用いた中性子散乱実験を行って秩序変数の推定を行った。秩序変磁が磁気双極子(反強磁性秩序が実現)の場合と、磁気八極子(反強八極子秩序が実現)の場合とでは、磁気形状因子の波数依存性が異なる。PrPd_3S_4の(100)磁気散乱の強度から磁気形状因子の波数依存性を調べた結果、波数の増加に伴って磁気形状因子が単調に減少する結果が得られた。このことは、秩序変数が磁気双極子であることを示唆している。(2)TbPd_3S_4の0.5T以下で見られる反強磁性相が、反強磁性秩序と多極子秩序との共存相であることを検証するため、磁気相互作用を強め多極子相互作用を弱めたTb_<1-x>Gd_xPd_3S_4、及び磁気と多極子の相互作用を両方とも弱めTb_<1-x>Gd_xPd_3S_4作製し、両秩序の分離を試みた。磁化と磁化率の測定によって物性を調べたところ、x<0.2の範囲では、xの増加にともなってGd置換系では反強磁性転移温度が単調に増加し、Y置換系では単調に減少することが分かった。磁化測定では秩序の分離は確認されなかったものの、今後の課題として、置換系の比熱測定による秩序分離の検証を行う必要がある。
すべて 2011 2010 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (13件) 備考 (1件)
J.Phys.: Conference Series
巻: 273 ページ: 012138-1-012138-4
巻: 273 ページ: 012060-1-012060-4
J.Phys.Soc.Jpn.
巻: 79 ページ: 064708-1-064708-6
Physica C
巻: 470 ページ: S598-S601
巻: 470 ページ: S732-S733
http://www.phys.sci.kobe-u.ac.jp/faculty/matsuoka.html