研究概要 |
本研究の目的は、希土類パラジウムブロンズRPd_3S_4(R=希土類)、及びRサイトを他の希土類で置換した化合物を作製し、各種物性測定からRPd_3S_4の多極子物性を明らかにすることである。平成23年度に得られた成果を以下に示す。 (1)SmPd_3S_4とTbPd_3S_4が示す反強磁姓転移が一次相転移的である起因として、転移温度において反強磁性秩序と何らかの多極子秩序が同時に起きている可能性を提案していた。この可能性を検証するため、両化合物の希土類サイトをY、又はGdで置換した化合物の多結晶試料を作製し、磁化と電気抵抗率測定を行った。同時秩序が起きていれば、希土類置換で転移温度に差が生じ、物理量に二つの異常が出現すると期待される。しかし、置換量の増加に伴い、Gd置換系では転移温度が増加し、Y置換系では減少するのみであったため、同時秩序が起きている証拠は得られなかった。Gd置換素の場合、置換量の増加に対する転移温度の変化率が、Gd濃度20%以上で急増した。変化率急増の原因は、Gd濃度20%以下では磁気と多極子の相互作用が競合的に働いて転移温度の増加を抑制していたものが、それ以上の濃度ではGd置換によって多極子相互作用が相対的に弱まり、競合による挿制も弱まったためと思われる。この競合が、両化合物の一次転移的な反強磁性転移の起因であると考えられる。 (2)多極子相互作用に起因した新奇物性を示す化合物の探索を行い、新しい正方晶化合物LnRu_2X_2B(Ln=Ce,Pr,Nd、X=Al,Ga)を発見した。このうち、CeRu_2Al_2Bは14.3Kと13Kで反強磁性と強磁性の逐次相転移を示す。13Kという強磁性転移温度は、Ce以外に磁性元素を含まないCe化合物のものとして二番目に高い。高い転移温度の原因として、正方晶化合物PrCu_2Si_2で言われているような、四極子相互作用の寄与の可能性を提案した。
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