LiV204などの遷移金属化合物が示す重い電子挙動について一つの手がかりとなる成果を挙げた。希土類化合物の示す重い電子挙動については、局在スピン系が持つエントロピーが伝導電子との結合のために低温で解放される、という定性的な描像が成立している。遷移金属化合物における問題点は、局在スピンのようなエントロピーの担い手があらわには存在しない事である。本年度は遷移金属化合物に置ける重い電子挙動の一つの本質的な要素として、幾何学的フラストレーションの効果に注目し、その役割を調べる目的でカゴメ格子上Hubbard modelに対して、クラスター動的平均場理論を用いた解析を行った。その結果、フラストレーションの無い正方格子の場合と異なり、この系では金属絶縁体転移近傍の広いパラメタ領域で準粒子ピークが安定化し、また、スピン会ラリティーモーメントの遮蔽に基づく独特の準粒子形成機構が存在する事を見出した。 また、幾何学的フラストレーションが伝導電子に影響を与える別の側面を追求するために、アイスルールを満たす局在電荷と伝導電子の相互作用系である拡張Falicov Kimball模型を考え、その電子状態を調べる研究を行った。その結果、パイロクロア格子の近似グラフである四面体伏見カクタスにおいて同模型を考察することにより、厳密解を求める事に成功した。厳密解は量子臨界点を含む豊富な相図を示し、量子臨界点上では非フェルミ流体的な挙動が示される。
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