研究概要 |
本研究の目的は,強相関電子系Mn酸化物の薄膜を用いてそのスピン・電荷・軌道自由度を利用した機能性ヘテロ接合をデザインし,電子系の対称性に敏感な非線形光学を駆使してその表面・界面における電子状態の変調とそのダイナミクスを観測することにある.本年度は 1,Mott絶縁体LaMnO_3とバンド絶縁体SrMnO_3界面においてフェムト秒時間分解の非線形磁気光学Kerr測定を行い,それぞれ反強磁性である物質間単一界面での強磁性の発現,また理論から予想されていたハーフメタリックなスピンダイナミクスを確認した.2次元に近い系であるが,スピン系の歳差運動を示唆する信号も観測された. 2,SrTiO_3及びLSATの(110)方位基板を使用し,低温で異なる電荷軌道秩序相転移を示すPr_<0.5>Sr_<0.5>MnO_3薄膜,Pr_<0.5>Sr_<0.5>MnO_3薄膜,加えて両者の極薄積層構造を作製し,SHG偏光解析を用いてその相転移の観測を行った.いずれもbulkとしては空間反転対称性を有するためにSHG禁制であるが,軌道・スピンの秩序に加え表面・界面での対称性の破れに起因すると考えられる新たな非線形分極を見出し,その起源となる電子・スピン系の再構成について考察を行った.また時間分解SHG測定により,軌道秩序に起因すると考えられる超高速緩和を観測した.これにより電子系の対称性だけでなく,そのダイナミクスから様々な秩序状態を区別できる可能性を示した. 3,各物質の実励起準位を用いた非線形スペクトロスコピーを行うため,実験系を変更し予備実験を行った.
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