研究課題
平成22年度に、新しいスピン1/2カゴメ格子反強磁性体である、(1)ベシニエイトBaCu3V2O8(OH)2、及び、(2)CdCu3(NO3)2(OH)6・H2Oの純良試料の合成及び物性測定を行った。(1)ベシニエイトBaCu3V2O8(OH)2ベシニエイトは銅の天然鉱物であり、理想的なスピン1/2カゴメ格子反強磁性体のモデル物質として期待できる物質である。報告者はBaCu3V2O8(OH)2の単相試料の人工合成に初めて成功し、磁化率及び比熱測定を行った。その結果、本物質がカゴメ格子にスピンが配列したスピン1/2反強磁性体であり、幾何学的フラストレーションの効果によって2Kまで長距離秩序・スピングラス転移を示さないことを明らかにした。低温では短距離秩序の発達が見られるが、スピンギャップは現れず、基底状態は何らかのギャップレススピン液体状態にある。(2)CdCu3(NO3)2(OH)6・H2O新しいスピン1/2カゴメ格子反強磁性体の理想的なモデル物質の候補として、CdCu3(NO3)2(OH)6・H2Oに注目した。本物質はこれまで単相で得られていなかったが、水熱合成法を用いることにより純良な単相試料を得ることができた。磁化率・比熱を測定したところ、スピン1/2の反強磁性体であり、4Kで弱強磁性相に相転移することが明らかになった。この弱強磁性相は、何らかの原因でスピンが傾いた傾角反強磁性相である。今後、この磁気秩序相の磁気構造を明らかにする予定である。
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