研究概要 |
本研究では1-3次元構造を有する系を対象とし、^<59>Co核種の核磁気共鳴(NMR)測定、輸送特性測定、磁化測定、光電子分光測定により、電荷・スピン・軌道の自由度の情報を引き出し、これらに基づき電子物性の発現機構の解明と制御に取り組んだ。 1.1次元系Ca_3Co_2O_6,Sr_6Co_5O_<15>,Sr_3PtNiO_6,Ca_<1-x>Na_xCo_2O_4 NMR測定によりCa_3Co_2O_6のスピンダイナミクスを調べ、スピンの秩序化の過程を明らかにした。また、Ca_3Co_2O_6とSr_6Co_5O_<15>にナノ構造化を施すことにより電気特性と熱特性を独立に制御することに成功し、熱電材料としての新たな設計指針を提案した。スピン液体物質Sr_3PtNiO_6のPtおよびNiの価数とスピン状態を決定し、電子の内部自由度に関する知見からスピン液体の発現機構に迫った。さらに、カルシウムフェライト型Ca_<1-x>Na_xCo_2O_4ではスピンブロッケード効果の存在を見出した。 2.2次元系Ca_3Co_4O_9,Ba2Co_9O<14> 熱電体Ca_3Co_4O_9では伝導を担う単一CoサイトからなるCoO_2面にcoherent/incoherentな性質を有する電子が共存し、これらが大きな熱電能に起因することを明らかにした。また、Ba_2Co_9O_<14>では陽イオン発生という特異な機構により強磁性が発現することを見出した。 3.3次元系R_<0.3>Sr<0.7>CoO_<3-δ>(R:希土類元素) 構造の乱れとキャリア量を独立に制御することに成功し、これらと電子物性の関係を報告した。特に、構造の乱れとキャリア自由度に大きな影響を与え、熱電能の符号が変化した。
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