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2010 年度 実績報告書

高感度の磁場角度分解比熱測定による擬一次元超伝導状態の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21740253
研究機関京都大学

研究代表者

米澤 進吾  京都大学, 理学研究科, 助教 (30523584)

キーワードTMTSF系 / 超伝導ギャップ構造 / 比熱の磁場方向依存性 / 擬一次元超伝導体 / ドップラーシフト / 高感度熱容量測定
研究概要

超伝導ギャップ構造は、超伝導発現機構を考える上で最も重要な情報の一つであり、またその超伝導体で起こる興味深い超伝導現象の理解の基礎ともなる情報である。我々は擬一次元かつ強相関の超伝導体として長く注目されてきた有機導電体TMTSF系の超伝導を研究してきたが、本年度は以下の原理によってこの系の超伝導ギャップ構造を特定するため、この物質の単結晶の比熱の磁場方向依存性を測定した:磁場中では電子のエネルギーに渦糸周りの超伝導電流によるエネルギーシフト(ドップラーシフト)が生じ、超伝導ギャップにゼロ点がある場合はゼロ点近傍で準粒子励起が生じる。この準粒子励起は比熱を若干増加させる。準粒子励起強度はギャップのゼロ点におけるフェルミ速度と磁場のなす角度に依存して変化するため、比熱の磁場方向依存性には振動が生じる。この振動を解析することで、超伝導のギャップ構造が明らかになる。しかし、擬一次元の超伝導体では、ドップラーシフト由来の比熱の振動が上部臨界磁場の異方性に起因する振動と合わさった形で観測されてしまうなどの実験的な困難があるため、これまで報告された例はなかった。
われわれは、高感度の比熱測定により、(TMTSF)_2ClO_4の比熱の磁場方向依存性に僅かな変調が起こることを見出した。この変調と、バンド構造をあわせて解析することにより、この物質のギャップのゼロ点位置を特定することに成功した。これは、擬一次元の超伝導体でのドップラーシフトの原理による超伝導ギャップ構造の解明の初めての成功例である。
この結果は現在Nature Physics誌に投稿済み・査読中である。また、この成果に関して、2011年度以降の国際会議への招待講演の依頼を2件頂いている。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2011 2010 その他

すべて 学会発表 (6件) 備考 (1件)

  • [学会発表] Thermodynamic study of the superconducting gap structure of (TMTSF)_2ClO_42011

    • 著者名/発表者名
      S.Yonezawa, Y.Maeno, K.Bechgaard, D.Jerome
    • 学会等名
      American Physical Society March Meeting 2011
    • 発表場所
      アメリカ合衆国、Dallas Convention Center
    • 年月日
      2011-03-24
  • [学会発表] 擬一次元有機超伝導体(TMTSF)_2ClO_4の超伝導対称性と温度-磁場相図2011

    • 著者名/発表者名
      米澤進吾, 前野悦輝, K.Bechgaard, D.Jerome
    • 学会等名
      新学術領域研究「分子自由度が拓く新物質科学」第4回領域会議
    • 発表場所
      東京大学本郷キャンパス小柴ホール
    • 年月日
      2011-01-06
  • [学会発表] 擬擬一次元有機超伝導体(TMTSF)_2ClO_4の比熱測定による超伝導秩序変数の解明2010

    • 著者名/発表者名
      米澤進吾, 前野悦輝, K.Bechgaard, D.Jerome
    • 学会等名
      新学術領域研究「対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象」第1回領域研究会
    • 発表場所
      京都大学時計台記念館国際交流ホール
    • 年月日
      2010-12-18
  • [学会発表] 比熱測定からみた擬一次元系(TMTSF)_2ClO_4の超伝導対称性2010

    • 著者名/発表者名
      米澤進吾, 前野悦輝, K.Bechgaard, D.Jerome
    • 学会等名
      第4回物性科学領域横断研究会
    • 発表場所
      東京大学武田先端知ビル武田ホール
    • 年月日
      2010-11-13
  • [学会発表] 擬一次元系(TMTSF)_2Xでの奇妙な超伝導状態2010

    • 著者名/発表者名
      米澤進吾
    • 学会等名
      日本物理学会2010年秋季大会
    • 発表場所
      大阪府立大学中百舌鳥キャンパス(招待講演)
    • 年月日
      2010-09-25
  • [学会発表] Specific Heat Study of the Quasi-One-Dimensional Superconductor(TMTSF)_2ClO_42010

    • 著者名/発表者名
      S.Yonezawa, Y.Maeno, K.Bechgaard
    • 学会等名
      International Conference on Science and Technology of Synthetic Metals 2010 (ICSM2010)
    • 発表場所
      京都国際会館
    • 年月日
      2010-07-06
  • [備考]

    • URL

      http://www.ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/person/yonezawa/index.html

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公開日: 2012-07-19  

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