1 [Pd(dmit)_2]_2X;X=(C_2H_5)(CH_3)_3Sbの希釈冷凍機温度域のNMR測定 上記物質は、1.4KまでのNWR測定により、少なくともこの温度までギャップレス量子スピン液体状態が実現していることが明らかとなっている。一般にギャップレス量子液体は、金属電子の超伝導転移等に代表されるように、低温で何らかの対称性の低下を伴う質的に異なる量子相へ移行することが期待される。このようなエキゾチック量子相の可能性を探るべく、希釈冷凍機を用いて極低温域のNMR測定を行った。その結果、1Kにおいてスピン-格子緩和率の温度依存性に明確なキンク異常が現れることを見出した。さらに、超微細結合定数の大きなCサイトを選択的に^<13>Cに置換した試料に対しても、全く同様な異常が生じることを見出した。これより、この緩和率の異常は分子運動等によるものではなく、スピン系の連続相転移によるものであると結論できる。又、スペクトル測定より、低温相においても古典的磁気秩序が生じていないことを確認した。これらを総合すると、 ギャップレス量子スピン液体相が、隠れた対称性の破れを伴う量子スピン液体相に移行していることが結論できる。さらに、低温相のスピン-格子緩和率の温度依存性は、スピン励起にノードギャップが開いていることを示す振る舞いであることも見出した。この低温相は、物質中の未知量子液体相である可能性がある。 2 [Pd(dmit)_2]_2X;X=(C_2H_5)(CH_3)_3Pの圧力下NMR・ac磁化率測定 上記物質に対し、圧力下においてNMR・ac磁化率測定を行った。これらの結果を総合することで、この物質の詳細なP-T相図を微視的に解明することに成功した。この結果得られた重要な知見は、超伝導相がP-T相図上でスピンギャップMott絶縁体相に隣接していることである。これは、この物質における超伝導が特異な対形成機構によるものである可能性を示すものである。
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