研究概要 |
1 EtMe_3P[Pd(dmit)_2]_2の圧力下超伝導 前年度までに行った外側^<13>C-NMR・ac磁化率の結果を解析することにより、上記物質の圧力下超伝導相は、通常の強相関超伝導とは異なり、圧力-温度相図上で磁気秩序相に隣接していないことを確定した。さらに、より電子情報を強く反映する分子内側の^<13>C-NMR測定を単結晶試料に対し行い、隣接Mott絶縁体相がスピンギャップ相であることを確認した。これらの結果を総合し、この系の超伝導は2次元強相関電子系で通常議論される(π,π)の反強磁性揺らぎによるd波超伝導という枠組みのものではなく、例えばd+idのような構造を持っている可能性を指摘した。 2 EtMe_3Sb[Pd(dmit)_2]_2のスピン液体 前年度までに行った分子外側^<13>C-NMR測定を解析し、上記物質について、(1)低温極限まで磁気秩序が生じず量子スピン液体状態が実現していること (2)基底状態は、古典的秩序とは異なる何らかの隠れた秩序構造を持つ、という点を結論し、T.Itou et al.,Nature Phys.6, 673(2010)に発表した。 上記に加え、分子内側^<13>C-NMR測定を行い、NMRのスピン-格子緩和率は、分子運動などのスピン系以外の要因には影響されておらず、スピン系の情報を間違いなく反映していることの証明に成功した。このスピン-格子緩和率の温度依存性から、基底状態は、フェルミオニックなフルギャップレス磁気励起(即ちSpinon Fermi Surface)を持たないことを見出した。(投稿中) さらに内側^<13>C-NMR緩和率の磁場依存性を測定し、この隠れた秩序構造を持つスピン液体状態が、磁場との異常なカップリングを持つことを見出した。このことから、このスピン液体がトポロジカル構造を持ち、それに由来する軌道磁性効果が生じている可能性を指摘した。
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