研究概要 |
超高圧下で重い電子状態や圧力誘起超伝導を示す物質に着目し研究を進めた。CeNiSi_2型斜方晶の結晶構造をもつCePtSi_2は反強磁性体であるが、圧力下で反強磁性が消失し、超伝導にともなうと思われる電気抵抗の減少が現れることが多結晶による研究で示唆されていた。そこで、引き上げ法により純良な単結晶を育成し圧力下で電気抵抗測定を行ったところ、1.7GPa以上で超伝導状態になることを確認し、超伝導上部臨界磁場の異方性を明らかにした。また同じ結晶構造を持つ化合物の探索を行い、これまで報告されていない新物質CeRhGe_2の単結晶育成に成功した。この物質はT_Nが7.6Kの反強磁性体であり、圧力をかけていくと一旦T_Nが上昇し、4GPa以上で減少に転じて7.1GPaで超伝導が現れることがわかった。さらに同様の量子臨界点における圧力誘起超伝導を期待して同じ結晶構造をもつYb化合物の合成も行った。 本プロジェクトの初年度にYbT_2Zn_<20>(T:Co,Rh,Ir)化合物が圧力下で量子臨界点に近づき大きな電子の有効質量を示す可能性があることを発見したのでさらに研究を進めた結果、YbIr_2Zn_20が5.2GPaで量子臨界点となり、450m_0にも及ぶ巨大な電子のサイクロトロン有効質量を示すこと見いだした。また更に圧力をかけることで、7.6GPa以上で圧力誘起反強磁性が現れることを突き止めた。5.0GPa、5.5GPaでそれぞれ50mKまでの電気抵抗を詳細に調べたが、量子臨界点で期待される超伝導は観測されなかった。当該物質の結晶構造は立方晶であり、電子状態は3次元的で重い電子超伝導の発現にはあまり適していないが、大きな格子定数のために磁気的相互作用が弱く抑えられ、近藤温度が非常に低い状態が実現してこのような極端に重い電子状態が現れると考えられる。
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