研究概要 |
スピン分極率100%の電流は新しい量子流体であり,そのハーフメタル強磁性体/超伝導体接合における新奇な物性物理分野を開拓することが目標である。したがって,スピン分極率の高いホイスラー合金を創製し,ホイスラー合金と超伝導体の接合界面で生じるアンドレーエフ反射と奇周波数クーパー対による近接効果の役割について統一的な結論を導出するために,初年度は主に,「ハーフメタル特性をもつホイスラー合金の創製と磁性に関する研究」と「奇周波数クーパー対の近接効果に関する研究」に重点をおき,ホイスラー合金の物性測定およびスピン分極率の決定の研究に取り組んだ。 具体的には,これまでの研究成果を踏まえ,ホイスラー合金Fe_<2-x>Ru_xCrSiやFe_2CrSiなどの電気抵抗率,磁化率,比熱などの測定により特性評価を行いながら,ホイスラー合金/超伝導金属の積層型接合を作製して微分コンダクタンスを測定した。Fe_<2-x>Ru_xCrSiは,Ru-richの試料は30K付近で反強磁性転移を示すが,Fe-richの試料は室温より十分高い温度でも強磁性体である。したがって,応用面からもFe-richの試料が高スピン分極率の材料として非常に有力できるが,現状ではスピン分極率が50~55%程度であり,Fe-richの試料に関しても高スピン分極率は達成されていない。また,得られた微分コンダクタンスを用いて,奇周波数クーパー対の近接効果のモデルによる解析も進めている。ゆえに,今後は,試料表面の状態や磁気的性質の評価も併用しながら研究を継続する。さらに,ポイントコンタクト(点接触)型クライオスタットの作製にも着手したので,今年度はこのクライオスタットを用いた測定プログラムなどを整備して,ポイントコンタクト法による微分コンダクタンスの測定を開始する予定である。
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