研究概要 |
当該年度では、まず、小型のブリッジマンアンビル型高圧容器の開発を行った。当初計画通りに現有のピストンシリンダー型容器とほぼ同程度の大きさ(外径25mm,全長61mm)とし、20t程度の耐荷重と部品点数を減らことで熱容量の軽減を念頭に置いて、強度計算、設計、製作を行った。圧力発生部(アンビル)の材料に絶縁体のジルコニア(ZrO_2)を用いた。それにより、試料部からのリード線の取り出しが容易に行えるようになり、今後計画しているNMR実験用でも従来用いられている炭化タングステン(WC)材より磁場中でのノイズが低減できることが期待できる。しかし、一方でWC材より強度が低いため、低い荷重で効率よく圧力を発生できるようにアンビルの先端部を小さく(φ4)した。そのためにガスケット材をアンビルに対して水平に設置するのが難しくなり、結果的に安定して高圧発生ができていない。今年度は、アンビルの形状を上下非対称にし、大きな下部アンビルにガスケットが安定して配置できるようにし、先端径の小さな上部アンビルで低荷重での高圧発生が出来るようにアンビル周辺の最適化を行う予定である。 また、鉄オキシニクタイド超伝導体はFeAs_4正四面体構造のボンド角と超伝導転移温度が議論されており、BaFe_2As_2の圧力誘起超伝導においては静水圧生と超伝導出現圧力の関係が話題になっていた。それらを考慮し、一軸性圧縮下における熱電能測定が必要と考えて、その測定技術開発をおこなった。しかし、単純な一軸性圧縮は、かなり低い圧力で試料が破砕してしまうので、試料をサポートすることで高圧まで試料破壊を防止しつつ、高圧まで測定できる手法を開発した。圧力決定等に問題があり、詳細を検討中である。 以上のことは、今年度の高圧討論会(日本高圧力学会)や日本物理学会の分科会、年会等で公表する予定である。
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