研究概要 |
低圧力で圧力誘起超伝導を示す"122系"鉄ヒ素系化合物のうち、EuFe_2As_2,CaFe_2As_2に加えて、その置換系のEu_<0.5>Ca_<0.5>Fe_2As_2について、超伝導出現前後の電子状態を圧力下電気抵抗率・熱電能同時測定を行うことで議論した。 この系は非常に静水圧性に敏感なので、高い静水圧環境を維持しつつ、非常に薄い試料に安定した熱流を確保するために、試料基板上の試料固定部分に穴を開けて、試料の両端だけ基板に接するように改良した。このセッティングによって、安定した測定が可能になった。 すべての試料で、Feの反強磁性転移に伴う構造相転移が圧力によって抑制される様子が観測され、電気抵抗では転移が確認できない圧力においても、熱電能には異常が観測され、これらの測定にはいいプローブであることを示すことができた。圧力誘起超伝導出現前には、低温でのゼーベック係数(S/T)は負の値を持っているが、臨界圧に向かってその値の大きさが減少し、臨界圧直前に一旦符号が反転し正の値を示した後に、転移によってほぼ0の値で一定になった。このことは、超伝導出現直前に大きくフェルミ面の状況が変化し、フェルミエネルギー近傍の状態密度が減少していることを示している。また、CaFe_2As_2においては約0.6GPaまで超伝導は観測されず、ガス圧を用いた高い静水圧環境では超伝導は観測されないという報告を考慮すると、我々の圧力セッティングは、非常に高い静水圧環境での測定ができたと考えている。
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