研究概要 |
本研究では単層カーボンナノチューブ(SWCNT)内部の1次元的空間に閉じ込められた水の挙動がSWCNT直径によりどのように変化するのかを、1^H,2^H核磁気共鳴(NMR)、x線回折実験、計算機シミュレーションにより系統的に調べた。昨年度、比較的太いSWCNTに吸着した水がwet-dry相転移を起こすことを見いだしていたが、今年度は平均直径1.68,2.0,2.2,2.4nmの4種類のSWCNTについて、系統的なNMRとX線回折実験を行うことによりwet-dry相転移温度を決定し、その直径依存性は直径が大きくなるにしたがい上昇することを明らかにした。直径領域1.1nm<D<1.5nmの比較的細いSWCNTに関しては、水が内部で液体-固体相転移を起こし多員環氷"アイスナノチューブ"を形成することを既に報告していたが、このうち7,8員環のアイスナノチューブでは、SWCNTの水吸着量が大きい場合、アイスナノチューブ内部空洞にさらに水分子の1次元チェーンが形成されることを新たに見いだした。これら実験で得られた水の相転移挙動をもとにSWCNT内部の水のグローバル相図を決定した。奇数環アイスナノチューブは強誘電体の性質を有することが古典分子動力学に基づく計算機シミュレーションにより示されたが、現在のところ誘電率測定により誘電特性を測定するまでには至っていない。また、チューブ軸方向に電場を印加した場合のアイスナノチューブの誘電分極過程は、アイスナノチューブを構成する水分子のチェーン構造のため、階段状の変化を示すことを計算機シミュレーションにより予測しており、これらアイスナノチューブの誘電特性を実験的に検証する研究を今後展開する計画である。
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